雑誌「クルーズ」に好評連載中の「世界の船旅」CRUISE誌上放映。
2017年10月27日発売の2017年12月号に掲載された内容をご紹介します。
第273話 飛鳥Ⅱ
飛鳥Ⅱでめぐる日本一周クルーズ
和のおもてなしが魅力の「飛鳥 Ⅱ」で日 本各地を訪れます。長崎の異国情緒漂う 街並みや、青森・八甲田の雪の回廊、ゲ ストシェフによるスペシャルディナー、船 上の盆踊り大会など見どころ満載。訪れ る港ごとに感動がある日本一周の旅を 紹介します。
「青春とは」
「青春とは人生のある期間で はなく、心の持ち方である」と いうサミュエル・ウルマンの有 名な詩がありますが、クルーズ の取材に行くといつもそれを実 感します。
ご高齢の乗客でも300グラムの大きなステーキを「食べ切れるかしら」などと言いながらぺろりと食べてしまったり、毎日のように船のイベントに元気に参加し、若いクルーと一緒に楽しんでいる姿をよく見かけます。今回、特に若さを感じたのは、寄港地でのこと。あるご高齢の 方に「どのオプショナルツアーに参加するんですか」と聞くと「あら。私たちは参加しないわよ。近くの駅までシャトルバスで送ってもらったら、あとは自由に動くのよ。帰りは適当にタクシーでも拾うわ」と言われました。
「行った先で不安じゃな いですか? ツアーの方が楽じゃないですか?」と聞いても「気楽で良いじゃない」「時間に縛られるのが嫌なのよ」と明るく返されました。 テレビの取材でも行き先や食事、交通手段などを考える心配 のない寄港地のオプショナルツアーに頼り切ってしまうことも 少なくありません。
年齢を感じさせない行動力に感服するばかりでした。歳を取ったらなるべく楽な方法、考えずに済む方法 を選ぶ、という先入観、偏見を持っていたことを反省しました。 後でデスクに報告すると「若 いくせに頭が固いんじゃないの?」と言われ、冒頭の言葉で説教されてしまったのでした。
第274話 クリスタル・モーツァルト
ドナウ川 美食と音楽の旅 〜オーストリア・チェコ・ハンガリー〜
ヨーロッパ最大を誇るリバークルーズ客船。全室スイート客室でバトラー付きの ぜいたくな船で、風光明媚なバッハウ渓 谷、英国のリチャード王が幽閉されてい たという古城や世界遺産の町チェスキークルムロフなどをめぐります。
「雪男?雪女?」
リバークルーズは陸との距離 が近く、デッキでゆったりと古 城を眺める乗客たちといった美 しい映像が撮れるので取材班に も好評です。ところが今回のロ ケは雨の日が多く、「もしかし て雨男ですか?」「そっちこそ 雨女だろ」とカメラマンと軽口 を言いながら撮影を続けました。
しかし乗客たちは、おいしい食 事や、きらびやかな装飾のラウ ンジ、スパなどを堪能し、船内 で過ごす心地よい時間に満足し ているようでした。 そしてブダペストに着く頃、 みぞれ混じりの雨にパラパラと 小雪まで降ってきたのです。も ちろんデッキに出て風景を見る 乗客がいるはずもありません。 季節外れの寒波に見舞われ「、雨 男じゃなくて雪男だったのね」 「あなたが雪女だからでしょう」 と二人で大笑いしていました。 すると、その様子を見ていた 外国人クルーが「何が面白い の?」と聞いてきました。「レ インマン(雨男)? スノーマン (雪だるま)?」。
とっさに英語 の正しい表現が出てこず戸惑っ ていると、カメラマンがたどた どしい英語で、「彼女はイエテ ィ(雪男)だ」と私を指さして答 えたのです。あぜんとする私、 得意げなカメラマン、困惑する クルー、三者三様の表情は今も 忘れられません。 ちなみに雨男はレインマンと か、レインブリンガー(雨の運 び手)と言うそうです。雪男は スノーブリンガー(雪の運び手) でしょうか。英語の表現にはま だまだ苦戦しそうです。