ギャラリー

「世界の船旅」スタッフこぼれ話 - 2012年11月号


  

いつかはきっと……

 今回は出発前からいつもと違う緊張感がありました。50歳以上限定、タキシード着用率100パーセントと言われる大人の客船。「最低でも蝶ネクタイは必要」と言われて上司に借りました。

 ところが、貧弱な体型には蝶ネクタイもカマーバンド(腹に巻く飾り帯)もまったく似合いません。どう見ても歳を食った七五三。上品で豪華な船内に足を踏み入れると、優雅に過ごす乗客たちの見事な着こなしに圧倒されました。「いつかこの船に似合う人間になって自力で乗ってやる」と心に決めました。

 ところが帰国後、サガ・ルビーが2014年に引退するというニュースが入ってきました。撮影素材は貴重な映像になったのですが、「目標が無くなってがっかりです」とつぶやくと、デスクが「2年以内に貫禄だけでも付ければ?」と大きなケーキを出してくれました。そういう問題かなあ?

洋上で鍼治療

 この船で最も注目したのは、洋上では珍しい「鍼治療」の施設。船で知り合った方にモデルをお願いしました。その方は、鍼治療の経験が無いらしく、不安だからと付き添いの友人と一緒に施術室に来られました。鍼治療ではほとんど痛みはないのですが、ベッドに横になっても緊張で体がちょっとこわばっているよう。ところが付き添いの友人は、落ち着かせるどころか「もっと刺してやって」とあおりはじめる始末。治療師の方も面白がって、いつもより多めに鍼を使ってくれました。

 翌日、朝日を撮影するためデッキに出てみると、モデルをお願いした方がジョギングをしていました。「鍼のおかげで調子が良いんだよ」。「ご友人は?」と尋ねると、「飲みすぎで寝てるよ。今日、鍼に連れて行こうと思ってるんだ」。すっかり鍼治療のファンになったようでした。

高級珍味のお土産

 アジアクルーズは食が楽しみ。各寄港地でさまざまな料理と、安価で良い食材に出会えました。日本では高級珍味として知られる「カラスミ」も、台湾の高雄では、300~500元(約1000~1500円)ほど。たくさん買いこんで、帰国後社内のスタッフに「いつもお世話になっていますから」と言って配りました。もちろん値段は言いません。「奮発したね」「お気遣いありがとう」と感謝の言葉をたくさん貰い、あるスタッフは感激してお返しに晩御飯をごちそうしてくれ、お酒もおごってくれました。その後も、いろいろと面倒を見てくれて、最後は編集室にお菓子の差し入れまでしてくれたのです。

 ところが、ちょうどその時、カラスミを売っているお店のシーンを編集中。大写しになった値札を見て、「ふーん。ずいぶん安いんだね」と一言。ちょっと気まずい瞬間でした。

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