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「世界の船旅」スタッフこぼれ話 - 2013年05月号


雑誌「クルーズ」に好評連載中の「世界の船旅」CRUISE誌上放映。
2013年3月27日発売の2013年05月号に掲載された内容をご紹介します。

  2013年05月号

koborebanashi_2013_05-img1a「早いぞ川船」

 アムステルダム近郊で、リバークルーズ船を川岸から撮影することになりました。船は100年前に建造された帆船サクセス号。先回りして、近づいてくる船を遠くから狙おうと、撮影計画を立てました。

 ところが、いざ船を下りて車で併走すると、信号や歩行者などの障害が多く、あっという間に時間が過ぎていきます。ようやく最初の撮影場所に着くと、船はすでに通り過ぎた後、後ろ姿しか撮れませんでした。大急ぎで次の予定地に向かいましたが、今度も渋滞などがあって遅れ気味。焦る気持ちを抑え、予定時刻ぎりぎりに到着、なんとか走る帆船を撮影できました。

koborebanashi_2013_05-img1b 船に戻ると船長から、「捕りやすいようにゆっくりと走っていたのだけど、どこから撮っていたんだい?」と聞かれ、返す言葉がありませんでした。リバー船の速さと良さを思い知った瞬間でした。

koborebanashi_2013_05-img2a「新人ひとり旅」

 手続きや情報の行き違いで、撮影に支障が出ることがまれにあります。このロケでは、ベテランのカメラマンが港で足止めを食って乗船できず、手続きをやり直して、次の寄港地から船に乗ることになりました。

koborebanashi_2013_05-img2b 乗船できたのは、入社2ヵ月目の新人君ただ一人。一人でロケに出るのも初めてなら、クルーズももちろん初めて。日本からの指示で、とりあえず、最初の寄港地まで一人で撮影すことに。とはいえ、それまでの間には、出港シーンや出発直後のだんらん、寄港地への入港シーンと、重要な場面が続きます。新人君は頼る者も無く不安を抱え、泣きそうになりながら撮影したそうです。

 帰国後、素材を確認すると、やはりあまり良く撮れていません。しかし、いつもは厳しい上司や細かく注文をつける編集マンも、肩をたたいてただ一言「お疲れさま」と言うだけでした。


koborebanashi_2013_05-img3a「夜のゴンドラ」

 ベニスで1泊停泊した際、夜のゴンドラを取材しました。日中は家族連れが多いゴンドラですが、夜はカップルがほとんど。案の定、新婚カップルと仲の良い老夫婦の舟に乗り合わせました。実はロケの出発前に数年間付き合った彼女と別れたばかりで、会釈してゴンドラに乗った瞬間、心が締め付けられました。カップルたちにカメラを向けてもファインダーがにじんで、ピントが分かりません。

 ところが、運河を半周もした頃でしょうか、漕ぎ手がカンツォーネを歌いだしたのです。カップルたちは周りなど気にせず、手を取り合って寄り添いました。すると、なぜか心が温かくなってくるのを感じました。

koborebanashi_2013_05-img3b 終点の桟橋で下りるときには、同乗したカップルたちに心の底から「いつまでもお幸せに」と声をかけられるようになっていました。ベニスの夜は心のもやまで水に流してくれたのでした。

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