雑誌「クルーズ」に好評連載中の「世界の船旅」CRUISE誌上放映。
2014年9月29日発売の2014年11月号に掲載された内容をご紹介します。
「大自然のパワーを満喫!ハワイ4島&南極大陸大冒険」
ビーチの歓声
「プライド・オブ・アメリカ」の取材では新しいカメラのテストを兼ねて、乗船前に出発地ホノルル周辺の観光地を撮影して回りました。しかし、観光客はテレビカメラに慣れているのか無関心で、「われ関せず」という雰囲気です。
ところが、あるビーチで撮影準備をしていると、今まで砂浜に寝転がっていた女性たちが突然立ち上がり、こちらを指差し始めました。「新しいカメラがそんなに珍しいのか?」とも思いましたが、そんなはずはありません。女性たちはこちらの方に駆け寄り始め、「もしかして俺、モテてる?」という変な妄想まで頭の中を駆けめぐりましたが、彼女たちはわれわれの横をあっさりと走り抜けていきました。
振り返るとそこには、某有名歌手がカメラクルーを引き連れて歩いてくるではありませんか。プロモーションビデオの撮影らしいのですが、男二人で撮影を続けるわが身が少しだけかわいそうになりました。
「古代文明をたどる 地中海・世界遺産クルーズ」
一人一台の時代
クルーズの後半、船内中央のアトリウムで乗客の結婚式が行われることになり、撮影に向かいました。開始時間が迫るとアトリウムは花嫁の姿を一目見ようという乗客たちでいっぱい。われわれもその中に混じって式が始まるのを待ちました。
厳かな音楽が流れ、新郎新婦が登場すると、一斉に乗客たちから祝福の声と拍手が送られました。幸せそうな二人が神父役の船長の前で永遠の愛を誓い、いよいよ誓いのキスを、というときです。それまで遠巻きに見ていた乗客たちが、その姿を撮影しようとカメラを手に前に出ていき、二人を取り囲みはじめました。カメラを持った人々に埋もれ、二人の姿はほとんど見えなくなってしまいました。
慌てて自分の立ち位置を変え、望遠レンズで狙ってどうにか撮影を済ませましたが、普及しすぎたカメラが、恨めしく思えた瞬間でした。
「花と絵画で癒される悠久の旅 知られざるオランダ・ベルギー運河クルーズ」
ここはどこ?
リバークルーズの取材はこれまで大陸を横断するコースが多かったのですが、今回はオランダ、ベルギーの運河と川を縦横に行き来する複雑なコースでした。主にオランダ国内を航行するのですが、オランダの水運は運河と天然の川が組み合わされているため、細かく水路の名前が変わります。
最初はまめにメモを取っていたのですが、船内イベントを撮影しているうちに別の川に入るなどして、次第に船の現在地が把握しきれなくなり、寄港地に着くたび、航路を再確認するはめになってしまいました。
帰国後、素材を確認していると、編集マンが当然のように質問してきます。「今船はどこにいるの?」「これは川?それとも運河?」「どこからライン川の支流になったの?」……。どんどん増える難問に答えながら、この人はオランダの水路より細かいな、と思わずつぶやいてしまいました。