雑誌「クルーズ」に好評連載中の「世界の船旅」CRUISE誌上放映。
2015年1月27日発売の2015年3月号に掲載された内容をご紹介します。
「特別な出会いと体験!ベストシーズンの南極クルーズ」
南極海と温度計
極地の厳しい自然環境を映像で分かりやすく伝えるため、今回は特別な温度計を用意しました。海氷に囲まれた南極が実は湿度が低、いということを示すため湿度も同時に測れる高級品を選びました。
まずは基準となる出発地の気温と湿度を測るため、出航直後にデッキの手すりに温度計を載せ、青い海を背景にして撮る準備を始めました。海が荒れることで有名なドレーク海峡に入る前なので、海も穏やか。のんびりと三脚を立てカメラをセットしていざ撮影、と思った瞬間、一陣の風がデッキを駆け抜け、あっという間に温度計を吹き飛ばしてしまったのです。
雪原や氷の上に置いた温度計など、構図まで考えていた映像がまるで走馬灯のように脳裏に現れ、温度計とともに波間に消えていきました。日本に連絡すると「じゃあ近くの100円ショップで買えば?」と笑えない冗談を言われ、さらに寒さがこたえました。
「飛鳥Ⅱ世界一周クルーズ五大陸6万8000キロの旅最新!飛鳥史上初五つの大陸を巡る大冒険」
遠すぎた橋
ベルギーのアントワープで、河口に停泊した「飛鳥Ⅱ」の外観を撮るため、川の対岸に渡ることにしました。日本から持っていったガイドブックに「渡し舟ですぐ」とあるので周りを見回しましたが、渡し舟は見つかりません。川上にあるのかなと思い上流に向かったのですが、歩けど歩けど渡し舟に出会わないのです。小舟が接岸できるような石組みはあるのですが、それらしき船や人は見当たらず。
飛鳥Ⅱの姿がどんどん小さくなり、米粒ほどになるとさすがに不安になり、近くにいた地元の人に渡し舟について尋ねました。すると「いつの話?何年も前に廃止されて、今は地下道で渡れるよ」とショッキングな言葉が返ってきました。
ガイドブックが数年前のもので情報が古かったのです。地下道の場所を聞くと、船のすぐ近く。大急ぎで戻りようやく対岸に渡ったときの喜びは忘れられません。
「アートあふれる豪華客船で巡る楽園東カリブ海クルーズ」
船もハイテク時代
この船はまるでSF映画の世界のように船旅をサポートしてくれます。イベントや施設の案内を船内の大型デジタルパネルや手持ちのスマートフォンでリアルタイムに確認できるのです。
ところが、いまだに「ガラケー」(旧式の携帯電話)を使っている私には、クルーに説明されても半分以上理解できませんでした。大急ぎで日本のデスクに電話し「アプリ」や「タブレット」の意味を尋ねました。時差の関係で真夜中にたたき起こされたデスクは、あまりに初歩的な質問にあきれてしまい、「分からないことはパネルに聞いて」と電話を切ってしまいました。
しかしそれが正解だったのです。実際に操作してみると船内のパネルは思いのほか親切で、アナログ人間の自分でもすぐに使いこなせました。ハイテクに味を占めた私は帰国後すぐ、携帯電話をスマートフォンに買い換えたのでした。