雑誌「クルーズ」に好評連載中の「世界の船旅」CRUISE誌上放映。
2018年6月27日発売の2018年8月号に掲載された内容をご紹介します。
第292話 セブンシーズエクスプローラー
世界最高峰の豪華客船で巡る 地中海絶景と美食の旅
世界屈指のクルーズ会社が究極のクルーズ客船を目指した船で、最高のサービスを堪能する船旅です。マヨルカ島では 地底湖で演奏会、ポルトフィーノではパスタ作りに挑戦。バルセロナからフィレンツェまで地中海の魅力を紹介します。
「ホテルディレクターは元軍人」
究極の豪華客船を目指して建造された最新客船とあって、船内はゴージャスそのもの。アト リウムには無数のスワロフスキー・クリスタルが輝くシャンデ リア、ビュッフェでは朝からシャンパンにキャビアの日も。 グランドピアノがある広さ 413平方メートルのスイート 客室には、ベッドルームと大理石のバスルームがそれぞれ2つずつ備わっています。
ベッドはマットレスだけで 1000万円 近くする一流ホテルの御用達品。 客室内にはスパまであって、専属のエステティシャンが 24時間いつでも施術してくれます。
もちろん船のスタッフも最高でした。外国船の取材では言葉の問題などもあってか、打ち合わせどおりに進まないことがよくあります。ところが今回は違いました。窓口となった女性のホテルディレクターが、優しいお母さんのような見た目なのですが非常にテキパキと対応してくれたのです。スケジュールは分刻みに立てられ、しかも5分前には現場に来て待っています。スタッフへの指示も的確で、部下の人も機敏にしかも礼儀正しく動くのです。それもそのはず、このホテルディレクターは元軍隊の将校さんだったのです。それを知ってから、その人の周りだけ軍艦の船内のように思えてきました。
のんびり過ごす乗客の後ろで、水兵さん、いやスタッフがきびきびと働いている。そんな“接客の最前線”に立つ、頼りになるホテルディレクターでした。
第278話 ハウマナ
南太平洋の楽園 絶景のポリネシアクルーズ
乗客定員27人の小型船「ハウマナ」でフランス領ポリネシアをめぐります。ボラボラ島でのジャングルツアー、タハア島で の洋上ランチなど、南国の明るい雰囲気と青く美しいサンゴ礁を眺めるクルーズライフを紹介します。
「ハウマナ・平和の心」
船名の「ハウマナ」はタヒチ 語で「平和の心」。その名のとおり、穏やかで平和な時間が流 れるクルーズでした。船内は小型船とは思えないほどのゆったりとした空間が広がり、船尾のプラットホームからは紺ぺきのサンゴ礁の海に直接出ることができます。さらに、モツと呼ばれる小さな島で足元まで海につかって涼しく食事をするアイランド・ランチなど、海と船との間の境界線を感じさせないようなクルーズでした。
毎日絶景の中で目覚め、何を 撮影しても美しく、その上、乗客やクルーともフレンドリーな関係が築けてくると「帰りたく ないなぁ」という思いがどんど ん強くなっていきます。クルーズ終盤、乗客たちに話を聞くと誰もが大満足と答えるのですが、あるフランス人男性だけが「僕は不満だね」と言い 出したのです。横にいた奥さまが「この楽園の何が嫌なの?」とけげんな顔をして見つめました。すると男性は、「この楽しい時間がもうすぐ終わってしまうことがさ」とフランス人らしく、機知に富んだ答えが返ってきました。それを聞いた奥さまは「そうね。ハンサムなスタッフとの別れは寂しいわね」と表情を和ませました。
さらに男性は「女性のスタッフはもう少し多くても良かったかな」と続け、その場に笑いがあふれました。不謹慎なんて言葉とは縁がない、ほのぼのとしたフランス人夫婦の会話に心の余裕を感じました。